赤ん坊になった霊媒

 伏見稲荷山には幾つもの御瀧場があります。その中でもっともきつい瀧場とされるのが
[清明舎]の御瀧です。伏見稲荷大社講務本庁が教師免状を与える指導者養成講座にお
いて、教師となる者には一度でもこの御瀧を受けさせたいと考えられていたようですが、何
分にも伏見稲荷山随一の瀧場とされ、その瀧行を指導出来る教官となる神主が居ないと
いうことで実施はされていません。
 神職をしていても瀧行を知らない神職だらけなのです。神職だけでなく、この清明瀧を行
場とする行者さんの数もさほど多くはありません。多くの行者も恐れる瀧なのです。私が師
事を受けた女先生は、若い頃から瀧行に明け暮れた方であったので、この清明瀧を支部
の行場としていたのです。

 ある夏の日、私と女先生と超一流の霊媒である○○さんと3人で瀧を受けていました。一
番最初に瀧を受けた私が着替えを済ませて瀧場に戻ると、女先生が瀧を受けておられま
す。その横に私の次に瀧を受けた○○さんが瀧場から出ずに座っているのです。?と見て
いると、○○さんがオンギャーオンギャーとやり始めました。○○さんが赤子になっている
のです。
 私が唖然として瀧場を見ていると、女先生の表情が変わりました。実に神々しい顔立ち
に変わったのです。観音様が女先生に入神されているのが見えます。何故か瀧場の中の
女先生の右手が上がれば、赤子霊は観音様と一緒に昇天になると解るのです。
 瀧場の中で女先生の右手が上がりました。昇天です。その途端、オンギャーオンギャー
と泣いていた○○さんが通常に戻りました。ふと横を見ると、何時の間にか一人の男性が
立っていて、その様子を手を合わせて拝んでおられました。
 瀧行を終えた女先生に聞くと、あの水子は○○さんのお孫さんです。男の方が拝んでお
られたでしょう。あれは○○さんの娘婿さんで、あの水子さんのお父さんになります。お父
さんが拝みに来られたので、水子さんがおばあさんを通じて姿を現し、観音様が引き取り
をされました。その様子を、あのお父さんに見せられたのです。

 伏見稲荷山におけるある夏祭りの宵宮。支部では清明舎を借り切っての宿泊で夜の御
瀧を受けていますと、閉じた私の瞼の中にある方の顔が大写しに見えます。この方は支部
の講員さんで母親は弁天様の御代をされた方。ご本人も少し弁天様が懸かる御方。
 通常、瀧行は目を明けてするとされていますが、私は瀧の中では無想になる為に目を閉
じています。そこで瀧の中から目を開けると、その顔が大写しになった方が私の瀧行を拝
んでいる多くの講員さんの中で印を組んで指先を私に向けているのです。?。何をしてい
るのかと思いながら瀧行を済ませました。
 瀧行を終えた私は、その方に云いました。貴女は私に向かって何をされていたのです
か?。すると、その女の方は云われます。解りましたか?。解らないと思ったのですが。そ
の横から女先生が口添えをされます。この方は周囲に居る人達の水子霊の障りを受けて
しまったのです。非常に苦しそうだったので水子霊の障りを取ってあげようかと思ったら、
突然に貴方に向けて水子霊を送ってしまったのです。貴方なら、いくら水子霊の障りなど
受けても平気だから、そのままにしておきました。何ともないでしょう。平気でしょと笑われ
ます。
 その女の方は云われます。苦しくて苦しくてどうしょうもなかったのです。どうしょうかと思
った時、瀧を受けている貴方の姿に思わず水子霊を送ってしまいました。済みませんでし
た。

 その翌日、○○さんと二人で食事をしていると、○○さんが云います。皆、自分には水子
等は無いと云う顔をしているが水子だらけじゃない。誰々は何体。誰々は何体。私に向か
って水子霊の引き受け御苦労さまでしたと云われます。

 通常、行者と呼ばれる者は瀧行の時には印を結んだり九字を切ります。私はそうしたこと
を一切したことがないのです。それは印の結び方も九字の切り方も知らないからです。そう
した時、多くの行者さんは怪訝な顔をされます。
 印の結び方も九字も切らないで瀧場に入るなど無茶そのものの行為。伏見稲荷山など
は多くの瀧場があり、行者達が護身の為に印を結んだり九字を切る。そうした九字は剣と
なって山の瀧場を走り回っているので護身の印も結ばず九字を切らなければ足元を救わ
れて危険きわまりない。水に濡れた岩場で転ぶ確率も高いと。
 行者と呼ばれる方は、貴方が師事した先生は貴方に印の結び方も九字の切り方も伝授
されなかったのかと聞かれます。私は伝授を受けていません。私が師事した女先生は、印
の結び方、九字の切り方は自分の御守護神様から授かるものであって、私が御守護神か
ら授かった印の結び方や九字の切り方は貴方に伝授するものではありません。貴方は貴
方の御守護神様から印の結び方や九字の切り方を伝授されたらよいのです。通常の印の
結び方や九字の切り方ならば本屋に行けばいくらでも売ってあります。それだけでした。
 ただ、私が師事した女先生は云われました。貴方は印を結んだり九字を切らなくても、瀧
場に入られる時、瀧の神様によろしくお願いしますと頼まれたならば、それだけで充分なの
です。神から御守護を受けられます。
 為に、私は他の方の瀧行を指導する時にも瀧場の神様よろしくお願いしますと頼んで指
導をするだけです。常に無手勝流。それで、充分守られて来たのです。
 
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